衣・食・住のいいこといろいろ。
和紅茶とは、国産紅茶のこと。
日本の風土ならではの繊細で豊かな味わいが知られるようになりました。
和紅茶の魅力や美味しく入れるコツ、
ぜひ知っていただきたいお茶農家のお話です。
和紅茶を飲んだことありますか? そうです、国産紅茶のことです。
紅茶というと、国内に出回っているのはインドやスリランカ産がほとんどですが、実は日本には、国産紅茶をつくっている茶園がけっこうあります。
今回、国産紅茶をご提供いただいたのは、佐賀県佐賀市の国産紅茶専門店「紅葉(くれは)」。取り寄せた紅茶は7銘柄です。
ひだまりブログに参加しているみなさんとお茶会を開いて飲んでみたのですが、インドやスリランカ産の紅茶に比べて、全体的に渋みが少なく繊細な味わい。和食や和菓子にも合う紅茶です。
みなさんからは、「日本茶に近い感じがする」「香りがいい」と声が上がり、ミルクティーよりも、ストレートで飲みたい紅茶が多いという印象でした。
銘柄によって味も香りも異なり、生産者を身近に感じられる和紅茶。その奥深さにすっかり魅せられてしまいました。

まず、和紅茶タイプは、大まかには、滋納(じな)、望欄(ぼうらん)、清廉(せいれん)に分けることができます。ただし、これらのタイプに分けられない紅茶もあります。
すべてに共通するのは...
「やぶきた」などの緑茶用品種を使っており、渋みがなく、柔らかな甘みを楽むような味わいの紅茶。
蒸らし時間:最低3〜5分。それより長くても旨味が出てくるので、敢えて長い時間蒸らしてもいい。和食や和菓子に合う紅茶。
海外紅茶に近い渋みなどを持った濃厚な味わいの紅茶。
蒸らし時間:1分半〜2分半。それ以上長く置くと渋みが出るので、砂糖やミルクを入れて楽しむようにつくられている。洋菓子に合う紅茶。
香り高く澄んだ味わいの紅茶。
蒸らし時間:2〜3分。渋みが強くなりやすいので蒸らし過ぎに注意。カップをしっかり温めておくと、香りをより楽しめる。お菓子やスイーツと合わせるよりも、単体で楽しむタイプの紅茶。
JAS認定の有機栽培紅茶。一年熟成させて出荷している品質の高い紅茶。茶葉が大きく、じっくり蒸らして旨みを引き出すタイプ。ストレート向きです。
化学農薬を使用せずに栽培された紅茶。インド系の茶樹を品種改良しただけあって、コクがあり、しっかりとした味わい。ストレートでもいいですが、ミルクティーもお勧め。
化学農薬を使用せずに栽培された紅茶。やさしい甘みを持った紅茶で、コクやクセ、渋みもありません。ストレート向きです。
緑茶品種で、渋みが少なく、ほのかな甘みがある。和菓子や醤油系の料理と相性がいい。
「べにふうき」品種の紅茶。春の特定の時期の一番茶のみを使ってつくられています。香り高く上品な味わいが印象的。もちろんストレートがお勧め。
「べにふうき」「べにひかり」などの紅茶品種の二番茶でつくられた紅茶。味わいが強く、渋めにブレンドしてあるので、ミルクティーとして飲むのにお勧めです。
紅茶専用の品種を使っていて、スリランカの紅茶に近く、紅茶らしい紅茶。ミルクティーにも合う。
JAS認定の有機栽培紅茶。日本茶の「やぶきた」品種で作られた、清涼感のある香りと瑞々しい味わいを持った紅茶。ストレート向き。
国産紅茶の魅力は、まず第一に生産者の顔が見えること。そして日本の水やお菓子にあった味が出ることです。特に、日本茶としてよく飲まれている「やぶきた」種で作った紅茶は、渋みが少なく強い味わいは出ないのでクリーム系のお菓子には合いませんが、羊羹やお団子などの和菓子と一緒に食べるととても楽しめる紅茶です。日本の風土に合った、日本ならではの紅茶と言ってよいでしょう。
一般的には、一番茶が終わった後の夏以降に生産されます。新茶もありますが、生産している人はまだ僅かです。そのため、国産紅茶の一番茶(ファーストフラッシュ)は、大変人気が高いです。
夏以降の生産が主流になっている理由は、新茶は、緑茶の方が高く売れることと、夏の方がカテキンが増して発酵が進みやすいためと考えられます。
日本での紅茶の生産は、明治の始め頃までさかのぼり、1950年代頃までは国内の需要だけでなく海外向の輸出が行われていたほど盛んでした。しかし、1971年の紅茶輸入自由化によって、価格面で輸入紅茶に対抗できす、ほとんどの紅茶農家が緑茶生産に切り替えるなどして国産紅茶はごく一部を残して消えていきました。
最近は、「和紅茶」として、国産紅茶に再びスポットが当たりはじめ、現在、日本には紅茶を生産している農家は300軒以上あると思われます(但し、正確な統計ではありません)。紅茶づくり専業、緑茶生産との兼業、年間何トンと生産する方から研究や実験のために何十キロのみ収穫という方まで、それぞれの考え方で紅茶づくりに取り組んでいます。
扱う品種も、アッサム種、緑茶向けの「やぶきた」種、最近話題になっている「べにふうき」などの改良品種などそれぞれで、さらにそこからブレンドを加える方もいます。
今回ご紹介したほかにも、静岡県丸子市の「静岡紅茶」、福岡県八女市の「奥八女紅茶」、鳥取県大山町陣溝の「鳥取紅茶」。最南では、沖縄県うるま市山城の「山城紅茶」、最北では、新潟県村上市の「村上紅茶」があります。
国産紅茶専門店「紅葉(くれは)」の
岡本啓(おかもと ひろし)さん
http://www.creha.net/
「紅葉」は、佐賀県佐賀市諸富町にある国産紅茶専門店。店主の岡本啓さんは、2000年に独学で紅茶専門店を開き、その後すぐに、国産紅茶「和紅茶」の魅力に引き込まれました。
岡本さんが取り扱う紅茶は、無農薬、有機栽培といった、どれも茶農家の方々が、味、香り、そして安全性を追求してつくり上げた一級品ばかり。自ら生産者を訪ね、自分の舌で味わい厳選した国産の紅茶を販売しています。
また、近年、新茶の価格低迷などで、苦しい経営となっている茶園に、二番茶で紅茶をつくることを勧めて販路を広げてもらうなど、茶園を支える活動も行っています。
現在、国内約10箇所の産地の紅茶を取り扱う一方、和紅茶マイスターJAPANを設立し、「和紅茶」ならではの魅力を多くの人に知ってもらうために奔走しています。
25年以上紅茶をつくり続けている
緒方貞行さん(鹿児島県鹿屋市)
緒方茶工房の緒方貞行さんは、80年代から、化学農薬を使わずに紅茶を生産している数少ない紅茶農家の一人です。緒方さんがつくる紅茶は、3種の茶葉を育て、4月の一番茶から9月始めの五番茶までを熟成させ、すべてをブレンドすることで、まろやかな味わいと香りを醸し出しています。
紅茶は、紅茶専用の茶葉でつくられるのでしょうか?
「やぶきた種のような緑茶向きの品種と、"いんど"、"印雑"などの紅茶用の品種がありますが、どんな茶葉でも製法によって、緑茶にも紅茶にもなります。緑茶は発酵させずに蒸し、紅茶は萎凋(いちょう)させて発酵させます。萎凋というのは、しおれさせることです。うちの紅茶は、いまは、"いんど"と印雑種、在来種の3種類をブレンドしています」
日本の紅茶生産の歴史は、明治にまでさかのぼるそうですが?
「輸出するほどつくられていた時期もありましたが、昭和46年(1971年)に紅茶の貿易が自由化になって、海外から10分の1くらいの価格で紅茶が輸入されるようになりました。それで、国産の紅茶がほとんど生産されなくなって、緑茶栽培が盛んになりました。いまは、国産紅茶の人気が高まっているので、紅茶をつくるところも、また増えてきています」
緑茶栽培が盛んになったは、どうしてですか?
「高く売れるからです。国も県も推奨したので、緑茶を生産する人が増えたんですが、あまりにも増えたので需要と供給のバランスが崩れて、売れなくなって、今度は緑茶が値下がりしました。いまは、一時期の半値くらいになってしまった」
高値で取引されていた緑茶も現状は厳しくなっていきているんですね。
「昨年あたりから、お茶農家が野菜をつくり始めてます。なぜかというと、不況の影響もありますが、ペットボトル茶の普及で、茶葉が売れなくなったからです。飲料メーカーは、元々、中国などから茶葉を安く仕入れてつくってましたが、昨今の輸入食品の問題で、輸入元を表示しなくてはいけなくなったので、国産茶を大量に安く仕入れるようになりました。なので、お茶農家は買い叩かれるわけです。そうすると、全体的に価格が下がってくる。しかも、重油やガスは値上がりし続ける。それで、お茶農家が、お茶だけでは食べていけないので、野菜づくりを始めたんです。ペットボトル用のお茶を飲料メーカーが大量に買ってくれるからといって耕地面積を増やして、機械化で設備投資を増やす生産方法に切り替えたことで、結果的に自分たちの首を絞めてしまったというのもあるんですよね」
ペットボトル飲料の普及は、容器の問題だけでなく、お茶農家にとっても大きな打撃を与えていることを初めて知りました。
「そもそも、美味しくないと思うんです。私なんかは、夏でも、自分のところのお茶を水出しして、水筒に入れて持って行きます。本当に美味しいです。ペットボトルのお茶は、置いておいても、色も味も変わらない。ビタミンCと称して、添加物が入っているから」
ペットボトル向けの大量生産とは逆行するように、緒方さんは、地道に紅茶づくりをしてきたんですね。
「全国のお客様から直接注文をいただき、一つひとつを自分で発送しています。インターネットはしないの。苦手なの(笑)。紅葉(くれは)の岡本さんのように直接訪ねてくれて、頑張っている人は別ですが、うちは、卸しもほとんどしていません。お客さんが口コミで聞いて、直接買ってくださってます」
農薬を使わない紅茶づくりで、しかも注文を受けて、発送までご自身で手掛けるのは大変な労力だと思います。
「4トン車に茶摘みの機械を積んで、1時間かけて茶畑まで通っています。一人で行きますが、今年69歳になるので、あと何年できるか。跡継ぎがいません。製造も家内と、その妹と3人でやっています。継ぎたいって言ってくれる人がいればいいが、化学農薬を使わない農業なんて手間がかかるから、食べていくのに精一杯で儲からんもんね。うちの後を継いでくれる人がいたら、お客さんもいるし、全部、引き継いでもらえるんだけど、そんな人がいないです」
私たちは、つい、安いもの、便利なものを選んでしまいますが、そうした背景には、生産者の置かれている苦しい状況や、失われていく食文化があることを心にとどめておきたいと思いました。
撮影:高橋麗奈(くらしのたのしみ)/温野まき(おひさまスタイル編集部)
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