おひさまコラム

衣・食・住のいいこといろいろ。

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中山うりさん(ミュージシャン)
クリクリした大きな瞳。小柄な体。そして、やや低めのスモーキーボイス。ミュージシャンでもあり、ヘアスタイリストでもある。
中山うりさんは、何にもとらわれずに、自分を表現しているようだ。
その様は、水中をスゥ〜となめらかに泳ぐ、魚のようにきれい。

猫が好き。

中山うり「猫?」
 中山うりさんの大きな瞳が、くるりと見開いた。「好きなんですよ。最近ちょっとまた、新居のほうに仔猫が来て。今、3カ月目くらいで、ちょっと大変。暴れ時。ワタシの脚は、今お見せできないほどヒドい」
 聞こえはクールでシリアス調だが、ポツポツとしゃべる言葉の合間に、嬉しそうな響きがこもっているのがわかる。
「実家に今2匹いて、外にも出して出入り自由にしています。この前実家に帰ったときに、朝帰りの猫を入れようとして、ドアを開けたら、隣にちっちゃいのがいたんですね。わかんないんですけど、傍にいて。実家は、3匹目はムリと言うことで」
 中山さんは飼い主を探したが見つからず、大家さんの許可を得て、かくして小さな同居人(猫)とあいなった。「大家さんも猫好きだったので、うちに来ることができました」。
 黒をベースにした白いブチ、やんちゃで甘えたい盛りの雄猫に『あおい』と名付けた。
nakayamauri090507_1538-1.jpg「家に来た日は、土砂降りの雨で、たぶん親猫を探して、すごい大きな声で鳴いていたんですね。だからその晩は、私と一緒に寝て。翌日は、すごい晴れてて、青い空で。それで......。あとちょっと宮﨑あおいちゃんに似ていたんで(笑)。彼女、仔猫ちゃん顔ですね、なでたくなる(笑)」
目に入れても痛くないほどかわいいのだろう、中山さんは口元を緩ませる。
 猫の気ままなところが合うのか、そのぶん犬がニガテとも話す。主人を待ち、主人と共に行動すること、役に立つことを喜ぶ犬の特性が「疲れちゃう。そんな気を遣わなくていいよって言いたくなってしまう(笑)」のだとか。
 沖縄・那覇の、ライブをする店の近くに猫のたまり場があると教えてくれた。沖縄に行けば、そこを訪ねて猫にまざる。
「沖縄って、人と猫が溶け合っているというか、生活を共にしている感じですね。野良猫も家猫もあんまり境がない......。それに猫がみんなきれいで。色つやもよくてちゃんと太っている」
 よくよく猫を見ている。猫と人との関わりを、沖縄の風通しの良さを思い出したのか、続けて「境がない感じ、好きですね」とポソっとこぼした。

境界線を引かない。

nakayamauri32.jpg 中山さんはミュージシャンであるのと、もう一つ、美容院に勤めるフリーの現役ヘアスタイリストでもある。二足の草蛙を履いていることに、なんのためらいもない様子。そもそも楽器に触れたのは、小学生のときと言う。
 「小学校で吹奏楽をやったのが最初でした。先生に『トランペットが向いている』と言われたので、トランペットをやったんです。実は、その時は楽器ができれば何でもよかったんですね」
こだわりのなさが、うかがえる言葉。それでも吹奏楽は、ずっと中学、高校まで部活を通して傍にあった。トランペットを吹き続けた7年間。好きが高じて、今や共に音楽を奏でる相棒だ。
 そして19歳の時に、パリの地下鉄でアコーディオンと出合う。正確にいうと、アコーディオンの弾き語りに遭遇した。地下鉄の中で演奏する姿と周囲の人たちの様子は、中山さんに「音楽が生活に溶け込んでいるな〜」という驚きを与えた。アコーディオンから出るやわらかい、包み込むような音にも惹かれた理由はあるだろうが、「『弾いて歌う』というのが絵的にかわいかった」と屈託なく言う。
 今では、アコーディオンを奏で、自らの声も楽器のように重ねて、言葉をメロディに乗せていく。音の連なりに身を委ねているその姿は、とても気持ちよさそうで、まるで水の中をなめらかに泳ぐ魚を想像させる。中山さんは、音楽の中をなめらかに泳いでいるみたいだ。
nakayamauri74.jpg「トランペットは、完全に上に乗っかる楽器というか花形。どう吹いても味になるんですけど、アコーディオンはバックの伴奏に溶け込むこともできるし、トランペットみたいに歌うこともできる。トランペットの楽しさに比べたら、アコーディオンの楽しさは、まだつかみ切れていない部分があるかな。トランペットなら吹きたいように、アタマで描いたものが、アウトプットできるんですけど、アコーディオンだとアタマでは鳴っているんですけど、なんだろう......みたいなのがある。まだまだですね」
 両方の良さと、手応えや試行錯誤を感じつつ、2つの楽器を自由に行き来している中山さんがいる。

「帰ってきたくなかったら、帰ってこなくてもいいよっていう。......帰ってきては、ほしいですけど」
 これは、中山さんが家の出入り自由にしている飼い猫に対して、出た言葉。なにやら中山さんの一事が万事を表しているようだ。スタイリストと音楽、トランペットとアコーディオン、人と猫......あらゆるものを自由に行き来できる魔法の靴をはいているみたいに。

趣味はものづくり

nakayamauri10.jpg ついこの前、仔猫のあおいくんが来るまで、中山さんは、猫のいない寂しさを、手を動かすことで紛らわせていた。......というのも、あおいくんが来てから気づいたことではあるのだが。
「引っ越しをしたこともあって、何もなかった家が寂しくて、狂ったように、とりあえずいろんなものを気づいたら作っていて」
 引っ越しをしてまず作ったのが、ワイヤーとビーズを使ったランプシェード2つ。初めて作ろうと思ったものが、ランプシェードというのにこちらが驚かされる。迷うことなく作りたいと思ったものを作る。「初心者だから」なんて固定観念も軽々飛び越えて(というか、最初からナイ?)、なんだか中山さんらしい。それから、彫刻刀で苗字を彫り、アクリル絵の具で着彩した表札。鍵編みの2枚の毛糸の円座。かくもバラバラな材料と手法だが、共通しているのは、指先を使うということ。器用さがわかるというものだ。どれも作り出したら、一晩寝ずに集中して作ってしまうとか。
「『え?これ、作ったの?』と言われたいんですよね」と照れ笑い。できあがってから携帯電話で写真を撮り、アマチュアっぽさが気になって、もう一度最初から作り直したこともあると話す。そんな職人的なこだわりもあるんだ、と中山さんの持つ別の一面を発見。

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 引っ越しをして、日当たりのいい部屋に住むようになって、家を彩るように植物を置いた。窓を開け、風を入れると、植物はよく成長するとか、日の当たるほうに向かって芽を伸ばすとか、植物たちをつぶさに観察し、太陽や風、そして緑がくれる自然の心地好さを実感している。
nakayamauri99.jpg「植物や猫もそうですけど、生き物がいるのはいい。成長を見ているのが楽しい。伸びる芽に、ふつうに『お、すごいなー』とか、猫のごはんも『こういうのが好きなのね』って」
 何気ないことにまなざしを向ける。そこには、執着はしないが無頓着ではない中山さんのゆるやかなこだわりが見え隠れする。きっと中山さんは、これからも口笛を吹くように気軽に、いろんなことを踏み越えていく。躊躇もせずに、行ったり来たりするに違いない。

撮影/高橋結宇 取材と文/井上晶子 編集/入江弘子



私のお気に入り

10年もの

nakayamauri127.jpgショルダーバッグ
10年前に5,000円で買ったバッグです。このかわいさで、この値段。ある日留め金が取れてなくなってしまって、知り合いの皮職人さんが、直してくれたんです。それから、ますます大事に使っています。

おうちCD

nakayamauri119.jpg『BEN DEMAIS!―WELCOME TO THE SAMBA SOUL KINGDOM』(写真右)ブラジルのJOREGE BENの曲をオムニバスで構成したアルバムですが、実は、ジャケ買い(笑)。当たり!で、カッコイイだけじゃなくて、メロディに哀愁がある。胸の辺りを掴まれるような1曲目が好きです。 
Maria rita 『segundo』(中)彼女のなんと言っても声が好きです。初来日のとき初ライブを観に行ったんですが、すごい母性が溢れたステージで、ほんとうに好きです。 
JOREGE BEN『SACUNDIN BEN SAMBA』(左)『WELCOME TO THE SAMBA SOUL KINGDOM』を聴いて、JOREGE BENを知って、それから買ったCDです。メロディが素晴らしくて、きゅんとします。

中山うり Profile

埼玉県出身。2007年にミニアルバム『DoReMiFa』でデビュー。ジプシースウィング、ミュゼット、タンゴなど世界中の音楽を融合させたサウンドとアコーディオンと歌という独特のスタイル。デビュー2年目にも関わらず「FUJI ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」「RISING SUN ROCK FESTIVAL」など各地の夏フェスを席巻。ミラクルボイスと絶賛されている歌声、アコーディオン、作詞作曲、トランペットも演奏するなどマルチな才能に加え、美容師としても活躍中。2009年6月24日には 初のLIVE DVDが発売される。
http://www.worldapart.co.jp/uri/

インフォメーション

DVD

ツール・ド・ケセラ2008ツール・ド・ケセラ2008 
2008年12月5日 東京キネマ倶楽部

レトロモダンなグランドキャバレーでの噂のベストライヴパフォーマンスがついにDVDに! レギュラーサポートにくわえ4ホーンセクション、32人編成のマーチングバンドも参加し、前代未聞のスペクタクルなステージを展開!

DVD発売記念ワンマンライブ『ナイト オブ グランドキャバレット 2009』
  • 日時:6月26日(金)  18:30 open/19:30start 
  • 会場:東京キネマ倶楽部
  • 問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999